歩く食いしん坊ライターのことです。
お正月に食べる「お雑煮」って、なかなかよその家のものを食べる機会ってないですよね。地域によって具材も味も違います。
私の実家(静岡県富士市)のお雑煮は、かつおだしに大根、にんじん、里芋、ほうれん草(菜っ葉ならなんでもよい)にお餅を入れて煮るタイプでした。実家では昔、お米をつくっていたこともあり、当時は釜戸で蒸したもち米を臼と杵でついてお餅にしていたんですね。
私は薪をくべるか、お餅を成形する担当でした。いや、つまみ食い担当かも(笑)
地元ならではなのは、お雑煮にだし粉(いわしの煮干し粉とあおさ)をちょっと振りかけること。富士宮焼きそばや静岡おでんに欠かせないだし粉、わが家にも常備されています。
つきたてのお餅をその場で成形して食べるという贅沢な時を過ごしていたんだなと、今さらながらに思います。
鏡餅用とすぐに食べるものは丸餅に、お雑煮用のお餅は角餅にして保存していました、たぶん。何十年も前なのでうろ覚えでごめんなさい。
そんな話はさておき、料理家の古谷真知子さんが主催する「お雑煮食べ比べの会」に初参加してきたので、今回はその様子をレポートします。
まずは出汁(だし)の違いを確認
参加者は9名。
まずはお出汁の飲み比べから。
「色が薄いものから飲んでね」とアドバイスいただき、その通りに飲んでみると、意外とみんな違ってわかりやすい。香りですぐにわかるものもあります。しいたけとか。
鶏だし、いりこだし、焼きあごだし、かつおだし、焼きえびだし、スルメだし、しいたけだしの7種類。焼きえびとスルメがちょっとわかりにくかったかな。
この7種類のだしを使ったお雑煮が順番に出てきます。
調味料も、お雑煮の地域のものを使うという徹底ぶり。さすがです。
調味料は、都内のアンテナショップで見つけたとのこと。
私がかつて働いていた有楽町の東京交通会館ビルには、アンテナショップがいくつかあるので便利ですよ。
調べてみたら、私の故郷・静岡のアンテナショップもありました。
地域の特色あるお雑煮7種
お雑煮はクセのないものから出していただきました。提供する順番もちゃんと考えられています。
今回のお雑煮食べ比べの会には、フレンチの小泉敦子シェフが参加されていたので、なんと贅沢にも敦子シェフがお雑煮用のお餅を焼いてくれました。
お雑煮のお餅は焼いたり、煮たり、揚げたりと、地域のお雑煮に合わせて調理していきます。ほんと細かいところまでこだわりがすごい。
岡山「スルメだしのお雑煮」
スルメでだしを取るって斬新。初めての体験です。
岡山は岡山でも北部で食べられるお雑煮なのだとか。お醤油で味付けしています。
だしとして使ったスルメもお雑煮のなかに入っているんですよー!
ほかの具材は、焼きぶり・かまぼこ・ほうれん草、大根です。
そして焼き餅。
さすがに1人前のお雑煮を7種類も食べられないので、小さめのお餅を半分にカットして少量ずついただいています。
スルメのだしがよく出ていて優しいお味。
焼きぶりがいい仕事してました。
千葉「はばのり雑煮」
今回の主催者である真知子さんの地元・千葉で食べられているはばのりの使ったお雑煮。
はばのりは、ちょっと塩気があってわかめのような匂い。
THE 海藻!
恐れ多くも敦子シェフがはばのりを炙ってくださいました。
こんなことしてもらっていいのか?と思いつつ、優しさに甘えてお任せしちゃう私たち。
優しい、優しい敦子シェフのお店がオープンしたら足繁く通いたい。
みんなでかつおを削ったり、のりを細かくちぎったり。
久しぶりにかつおを削りました。たぶん小学生以来(笑)
かつて、実家ではこんなこともやってた(やらされてた)なぁと懐かしくなりました。
削りたてのかつお節と6種類ののり。
青のり、干葉(ひば)、はばのり、はばのり(養殖)、もみのり、すじ青のり。
これらをお雑煮に好きな分量だけ入れていきます。
かつお昆布だしをお醤油で味付け。
具材は、大根・油あげ、のり各種とお餅です。
これが…
こうなる!
これ、めちゃくちゃ美味しい!!!
のり大好きなので、いくらでも食べられそうだったけど、あと5種類のお雑煮が控えているのでセーブしました(笑)
のりがいい感じにだしを吸って、それがまたいい味になっています。
はばのりが手に入れるなら、家でもつくってみたい。
福岡県(朝倉のみ)「蒸し雑煮」
見た目は茶碗蒸しとなんら変わりはありません。
味も茶碗蒸しです。
何が違うかというと、なかにお餅が入っています。
じゃじゃーん!
なんとせいろで蒸していただきました!
だしは、焼きあごだしを使用。
具材は、しいたけ・かまぼこ・鶏肉・三つ葉、そしてお餅。
これは一般家庭でもつくれそう。
茶碗蒸しにお餅を入れるとは斬新な発想ですよね。
福岡県全域で食べられているわけではなく、朝倉地区限定。
地域性を感じるお雑煮でした。
鹿児島「焼きえび雑煮」
4品目は鹿児島のお雑煮が登場。
焼きえびだしをメインに、かつお昆布だしとしいたけだしを入れて、鹿児島の甘醤油で味付け。
具材は、干しエビ、大根、小松菜、にんじん、白菜、さつま揚げの豪華ラインナップ!
またまた敦子シェフにお餅を焼いていただきました。
お椀にお餅がくっついてしまうのを避けるために、大根を敷いてからお餅を入れるという念の入れよう。なるほどなぁ。
甘醤油が入っているので、やっぱり甘い。
けれども焼きえびだしと絶妙に合ってて美味しい。
あとですね、さつま揚げがめちゃめちゃ美味しかった。
これも鹿児島の勘場(かんば)蒲鉾店のさつま揚げなのだそう。
それは美味しくて当たり前ですわ。
北海道「玉ねぎ雑煮」
北海道では、もともとお雑煮を食べる文化はなかったらしく、最近食べるようになったそうです。
真知子さんが「オニオンスープにお餅が入っていると思ってください」と説明していました。
玉ねぎ雑煮は、鶏だしをベースに北海道のめんつゆ「めんみ」で味付けされています。
具材は、玉ねぎのみ。
お餅は揚げ餅。
またまた敦子シェフにお餅を揚げていただきました。
本当にありがとうございます!
揚げ餅にするといつまでも冷めないので、寒い地域の理にかなったお雑煮です。
玉ねぎがとろろろ。甘みがよく出ていて美味しい!
ちょっと洋風な感じです。
香川「あん餅雑煮」
6品目は香川県のあん餅雑煮。
お雑煮にあんこの入ったお餅???と、正直食べる前までは味の想像がつかなくて恐る恐るといった感じでした。
いりこだしに、たっぷりの白味噌を溶いています。
いりこは香川県の伊吹いりこを使用。あくまでも地物にこだわっています。
具材は大根とにんじんのみ。丸いあん餅に丸くカットした大根とにんじん。
丸づくしで見映えしますね。
実食したほうは、あん餅が沈んで見えない(笑)
甘しょっぱい味って、そこまで好きじゃないんですが、このあん餅雑煮は食べやすい。
白味噌とあんこが合う!
「ちょっとあんこを溶いて食べてもいいですよー」と話していたので、試しにやってみたら、それもまた美味。
想像を超える味だったけど、かなり気に入りました。
福井「しいたけ雑煮」
最後は福井県の「しいたけ雑煮」です。
干ししいたけのだしを使用。越後味噌(本来は越前味噌を使いますが、見つからなかったそう)で味付け。
具材はだしとして使った干ししいたけのみ。餅は丸餅を煮ています。
干ししいたけの旨みを存分に味わえるお雑煮でした。
しいたけ苦手な方には厳しいかな。私は大好きなので美味しくいただきました。
そもそもお雑煮の定義とは?
今回はお雑煮を7種類いただいたわけですが、正直「え、これってお雑煮といっていいの?」と思うものもあったんです。
真知子さんからは、こんな説明がありました。
「お雑煮というのは、お正月に食べる餅の入った、だしを使った料理のことをいいます」
なるほどぉ!
蒸し雑煮はお餅も入っているし、だしも使っています。
納得です。
お雑煮の食べ比べは”みんな違ってみんなイイ!”
お雑煮食べ比べの会は、和やかな雰囲気のなかで美味しく、楽しく終わりました。
どれもまったく違った味だけれども、どれもお雑煮!
それぞれの地域の特色がよくわかり、まさに”みんな違ってみんなイイ!”といった感じでした。
最後に真知子さんと敦子シェフと記念写真。
地元の味にこだわって食材を調達してくれた真知子さん。本当にありがとうございます。
そして、フレンチの料理人でありながら調理のお手伝いを快く引き受けてくださった敦子シェフに感謝です。
お雑煮食べ比べの会は、毎年この時期に開催しているので、また来年も参加したいな。
以上です。
こういったイベントがあったら、またレポートしますね。
ではまた!A bientôt!
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