見出し画像

翻訳家に必要なスキルは3つ!語学力よりも大切なのはライティング力

語学が好きな人は、翻訳や通訳の仕事がしてみたい!と、一度くらいは考えたことがあるのでは?

わたしの場合は、小学生の頃から英語が好きで、英語以外の言語も学びたくなり、フランス文学科を専攻しました。翻訳の仕事っていいな、と思ったのは大学3年生のときです。

でも、大学でフランス語を勉強しただけでは、とうてい翻訳家として仕事をするレベルには達しませんでした。

なぜならば、翻訳家になるために必要なスキルは、語学力だけではないからです。このことは、翻訳の仕事を始めた頃に思い知らされました。

”語学ができる=翻訳ができる”というのは大きな間違い。

そこで、このnoteでは、翻訳家に必要な3つのスキルについてお伝えします。

私が考える翻訳家に必要な3つのスキル
①ライティング力
②リサーチ力
③語学力

あくまでも個人的な考えですが、翻訳スキルの比率は、ライティング力5割、リサーチ力3割、語学力2割くらいだと思っています。

なので、語学さえできれば翻訳もできると思っている人は、ぜひ読んでみてください。また、翻訳に興味があるライターさんにも知ってほしい内容です。

【翻訳家に必要なスキル1】ライティング力

日本語のライティング力=国語力は、翻訳においてもっとも重要です。

というのも、いくら外国語ができても、ちゃんとした日本語になっていなかったら、誰にも理解してもらえませんから。

外国語に忠実に訳したら、それはただの直訳。翻訳の仕事として成り立ちません。きちんと読み手に伝わるような日本語の文章にするのが”翻訳”です。

語学が得意な人がやってしまいがちの直訳。

では、直訳にならないようにするにはどうすればいいのでしょうか?
ポイントを4つ挙げます。

  • 時制は気にしない

  • 語尾を変える

  • 原文が長文なら、区切って短文にする

  • 原文の順番どおりに訳さない

ライターさんなら、お気づきかもしれませんね!そう、ライティングの基本と共通することばかりです。

時制は気にしない

英語もフランス語も時制の一致というものがあります。

フランス語の場合は、過去形1つとっても「複合過去」「単純過去」「近接過去」「半過去」「大過去」に分かれています。さらに条件法やら接続法やらが絡んでくると「え、なにこれ。これだからフランス語は…」と思いたくなるほど複雑。

でも、翻訳においては、原文の内容がきちんと分かれば、「〜だった」「〜していた」「〜だったのに」と、いちいち過去形に訳さなくてもOKです。もちろん、時制を変えたせいで、原文の流れが変わってしまうのはNG。

意味さえ読み取れれば、過去形だから過去形にしなきゃ!と思わなくても大丈夫です。

では、どうして時制にこだわってしまうのでしょうか?

答えは簡単。

英語の授業で、英文のなかに過去形があったとします。先生に「訳して」と言われたとき、日本語も過去形にしないと間違いだと言われますよね?

だから、翻訳するときも「過去形にしなきゃダメ!」という考えが染みついてしまっているんですよ。

でも、翻訳で大切なのは「文章の流れとリズム」。これを忘れないでください。

結論:文脈さえ間違っていなければ、時制を気にして翻訳しなくてもいい!

語尾を変える

「語尾を変える」は、ライティングでよく言われていますよね。「〜です」「〜ます」と同じ語尾が3回続いたら、日本人の感覚としてリズムが悪いと感じます。

読みやすい文は、ですます、過去形、体言止め、未来形、否定形、疑問形などがうまく組み合わされています。

翻訳もまったく同じ。外国語の訳だから語尾が同じでいいなんてルールは存在しません。だって、訳文は日本語ですから。

「時制を気にしない」というのも、文章のリズムを崩さないためです。

結論:翻訳もリズムが大事!だから同じ語尾が続くのは避けよう!

原文が長文の場合は短文にする

日本語でも、文章が長すぎると、結局なにが言いたいのか分からないことってありませんか?

もしそれが、一文が長い外国語だったら、なおさら混乱してきますよね。接続詞がどことつながっているのかを判断するのも大変です。

なのに、長文そのままに訳したら、どうなるでしょう?
読者にとっては読みにくくて、「この翻訳なに?全然分からない!」と思われてしまいます。

原文が長文だからって、訳文も長文にする必要はありません!
原文のカンマごとに区切って、短文にしてしまえばいいんです。

結論:翻訳は、読みやすさが大切!原文が長文なら、区切って訳す!

原文の順番どおりに訳さない

長文を区切って短文にしても、原文の順番どおりに訳文を並べたら、意味が分からない文章になってしまうことがよくあります。なので、自分のなかで文章の流れを組み立てて、順番を入れ替えなければなりません。

なんでも律儀に順番どおりに訳すのは、学校で「読んで、訳して」と言われたときだけで十分。

時の流れによっては、段落ごと順番を変えてしまっても構いません。とにかく読みやすく!つまりリライトの能力も必要になってきます。

原文に引きずられて、おかしな日本語にならないように心がけることが大切です。

結論:原文の順番どおりに訳していたら、意味が通じない。リライト大事!

【翻訳家に必要なスキル2】リサーチ力

翻訳家にとって、リサーチ力も大切なスキルです。なぜならば、「原文が必ずしも正しいとは限らない」からです。
特に年号や時間、数字には気をつけなければなりません。

かつて、わたしはこんな失敗をしたことがあります。
ある人物の伝記の下訳をしたときの話。伝記なので「〇〇年に〜〜をした」という文章がたくさん出てきました。かなり念入りに調べて、間違いがあれば訂正して訳していました。

けれども、たった一か所だけ原文そのものの間違いに気づかず、そのままの年号にしてしまったことがあります。わたしは、その一か所の間違いのために信用を失ってしまいました。

この出来事があってから、本当に念には念を入れてリサーチしています。

ほかにも、日本人には理解しづらい習慣や表現ってありますよね。そんなときも、そのまま訳すのではなく、リサーチして、日本人に当てはまる習慣や表現に置き換えることも必要になってきます。

また、リサーチを検索に頼ってばかりでは成長しません。本を読んだり、母国語の友人に聞いてみたりして自らもブラッシュアップさせていきましょう。

【翻訳家に必要なスキル3】語学力

翻訳家にはライティング力とリサーチ力が必要だと力説してきましたが、もちろん語学力も必要です。

でも、語学力といっても、話すための語学力は必要ありません。ぶっちゃけ翻訳家は話せなくてもOK!

翻訳家が語学力のなかで必要な能力は、原文を正しく読みとる「読解力」です。

おそらく「絶対に誤訳をしない」翻訳家はいないと思います。けれども、誤訳を限りなくゼロに近づける努力はしなければなりません。そのために不可欠なのが読解力です。

ならば、どの程度の読解力があれば翻訳ができるの?って思ったかもしれませんね。
文章の難易度にもよりますが、個人的には、原文を読んで、ざっくりと意味が理解できるレベルだと思っています。

翻訳家だって、細かい単語1つ1つが辞書なしで分かるわけではありません。駆け出しの翻訳家ならなおさらです。かといって、いちいち辞書で調べていたら、とんでもなく時間がかかってしまいます。

つまり、初見で、おおよその意味が分かるだけの語学力があれば大丈夫。経験すればするだけ、読解力は上がっていきますから、心配は無用です!

3つのスキルを身につけて翻訳家をめざそう!

語学が得意だから翻訳家になるのは簡単!と考えるのは早計です。

繰り返しになりますが、翻訳家に必要なスキルは以下の3つ。

・ライティング力
・リサーチ力
・語学力(特に読解力)

語学が得意で、翻訳家になりたいと思っている人は、ライティング力とリサーチ力を身につけてください。

ライターさんで翻訳をやってみたいと思っている人は、語学力を磨きましょう。原書を読むのが読解力をつける近道です。

翻訳家になるのって、ハードルが高い…と思ってしまったかもしれませんが、実際はそんなことはありません。
上記3つのスキルを習得して、あとは経験あるのみ!わたしのような失敗をしても、挽回するチャンスはあります。

ですから、もし翻訳に興味があるなら、まずは一歩を踏み出してみませんか?
やればやるほど、翻訳の奥深さと楽しさに気づけるでしょう。

それでは!A bientôt!

※このnoteは2019年にブログに書いた内容をnoteに移行してリライトしたものです。

翻訳した本もぜひ読んでみてください。

翻訳の仕事についてはこちらのnoteを参考に。


この記事が参加している募集

仕事について話そう

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?